遺留分とは?もめない遺言を作成するために注意すべき3つのポイント

遺言を作成する場合、「専門家に遺言作成の支援をお願いする方」と「専門家を頼らすご自身で作成する方」に分かれます。自筆証書遺言の場合は特に、紙とペンがあればすぐに作成することができるというメリットから、専門家を頼らない方も多いと思われます。
専門家に依頼しないことのデメリットはいくつかありますが、その中の1つに「遺留分」があります。

今回の記事のポイントは、下記の3つです。

  • 兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があるため、将来の紛争を避けるためにも、遺言を作成する際には遺留分に配慮する。
  • 相続法の改正により、遺留分は金銭債権化されたため、遺留分侵害額請求をされるおそれがある場合には、遺留分に相当する金銭の確保が必要となる。
  • 生命保険の活用は、遺留分対策としても相続税対策としても有効な手段である。 

せっかく遺言を残しても、遺言の内容通りに相続させることができなければ、故人の想いは果たされません。
今回の記事では、一般の方が見落としがちな「遺留分」について解説していきます。

遺留分とは?

遺留分

「遺留分」とは、相続人に認められた最低限の遺産取得割合のことです。
亡くなった方(被相続人)がどのように自分の遺産を相続させるかは、個人の自由です。そのため、「全ての財産を長男●●に相続させる」とすることも「全ての財産を『愛人』に相続させる」こともできます。
これは「遺言は、法定相続分に優先する」という大原則があるためです。

しかし、このような遺言があった場合、その後の生活ができなくなってしまう相続人や、生前の貢献度に対して遺産の取得割合が少ないことに納得がいかない相続人も出てきます。
そこで、そのような場合に一定割合の遺産を取り戻すことができる権利が「遺留分」です。

 

遺留分が認められる相続人と遺留分の割合

遺留分割合

遺留分は、全ての相続人に認められるわけではありません。
遺留分を請求できる権利を持った人(遺留分権利者)は、以下のとおりです。
・配偶者
・子
・父母や祖父母(直系尊属)

「兄弟姉妹には遺留分がない」ことに注意が必要です。
遺留分の割合は、被相続人の財産の2分の1(直系尊属のみが相続人である場合は、被相続人の財産の3分の1)とされています。
相続人が複数いる場合は、それぞれの法定相続分をかけたものが各相続人の遺留分割合となります。

相続人とそれぞれの遺留分をまとめると、以下のようになります。
遺留分

遺留分侵害額請求とは?

遺留分減殺額請求

遺留分は法律上保証されている権利ですが、「全ての財産を長男●●に相続させる」という内容の遺留分を侵害する遺言を作成することも可能です。
なぜなら、遺留分は当然に主張しなければならないものではなく、遺留分を主張するかしないかは、原則的に相続人の自由とされているからです。
そのため、たとえ遺留分を侵害する遺言書を作成したとしても、遺言は無効とはなりません。
なお、認知症などで相続人に成年後見人がついている場合は、成年後見人は必ず遺留分の請求をしなければならないとされているので、その点には注意が必要です。

また、たとえ遺留分を侵害する遺言書があったとしても、当然に遺留分に相当する財産が戻ってくるわけではありません。
遺留分を取り返すには、遺留分を侵害した人に対して請求をする必要があります。このような請求を「遺留分侵害額請求」といいます。

この遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効により消滅してしまいます。
また、遺留分が侵害されていることを知らない場合でも、相続開始の時から10年間が経過すると消滅してしまうことにも注意が必要です。

なお、この遺留分侵害額請求は特別な決まりがないため、必ずしも裁判によってする必要はありません。口頭で請求をすることもできますが、後日の証拠のために、内容証明郵便で請求することが一般的です。
もし、当事者間の話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所に「遺留分侵害額請求調停」の申立てをし、調停でも解決できない場合には、訴訟を提起するという流れになります。

 

遺留分侵害額請求の債権化

債権化

従前は、遺留分を取り戻す請求権は「遺留分減殺請求権」と呼ばれていましたが、相続法が改正されたことにより、2019年7月1日から「遺留分侵害額請求権」に変更されました。
改正前の遺留分減殺請求権は、現物返還とされていたため、例えば相続財産が自宅しかない場合は、自宅の名義が遺留分権利者との共有状態になってしまいました。財産が共有名義になっていると、自由に財産を処分することができないため、遺留分権利者にとっても、請求をされた側にとってもデメリットでした。
改正前であっても、遺留分を請求された人から金銭での解決を提案することはできましたが、請求する側から金銭を求めることはできませんでした。

しかし、今回改正により、遺留分を侵害された人は遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになったため、このようなデメリットは解消されました。
なお、遺留分に相当する金銭の準備が困難な事情がある場合には、裁判所に申し立てを行うことにより一定期間の猶予を受けることができます。

 

遺留分対策

遺留分対策

遺言書を作成する目的の1つに「円満な財産の承継」があります。
しかし、遺留分の請求がされれば、これまで友好的だった家族関係が壊れてしまうおそれがあります。そして、一度相続で揉めてしまうと、家族関係が元に戻ることはありません。そのようなリスクを避けるためにも、遺言書を作成する際には、遺留分に配慮する必要があります。

遺言書を作成する際の遺留分対策には、下記の3つがあります。

遺留分の放棄

遺留分は、遺留分権利者が放棄することができます。被相続人の死後であれば、特別な手続きは必要ありませんが、被相続人の生前に遺留分の放棄をする場合には、家庭裁判所の許可が必要となります。
遺留分は、法律上保証された権利であるため、本人の意思に反して遺留分の放棄をさせられることなどがないよう、下記の3つの判断基準が設けられています。

・遺留分権利者の自由な意志によるものであること
・遺留分放棄に合理的性や必要性があること
・遺留分権利者へ遺留分に相当する代償があること

遺留分を生前に放棄することで、将来の相続争いのリスクを減らすことはできますが、遺留分権利者が自ら裁判所へ申立てをする必要があるため、生前から紛争性が予見できる場合には有効な手段とはなりません。

生命保険の活用

生前に遺留分を放棄してもらうことが難しい場合などに有効な対策として、生命保険の活用があります。生命保険金は、受取人固有の財産となり遺産分割や遺留分の対象とはなりません。
そこで、契約者(=保険料を支払う人)及び被保険者(=保険の対象となる人)を被相続人、受取人を遺留分の請求を受ける相続人(財産を多く相続させたい相続人)とする、一時払いの終身保険に加入します。これにより、生命保険金は遺留分の請求を受ける相続人の固有財産となり、遺留分侵害額請求の対象とはなりません。仮に、遺留分侵害額請求をされた場合には、受け取った生命保険金をもって遺留分に相当する金銭の支払いにあてることができるため、たとえ遺留分の請求を受ける相続人が現金を持っていない場合でも、資金面で苦労するということもありません。

さらに、生命保険の活用は、相続税対策としても有効です。生命保険金は、遺産分割や遺留分の対象とはなりませんが、相続税の課税対象とはなります。しかし、生命保険金には(500万円 × 法定相続人の数)が非課税限度額が設けられているため、手持ちの現預金を生命保険金に変えることで、相続財産を減らすことができ、結果的に、相続税を減額することができます。

付言事項

「付言事項」とは、法律で定められた遺言事項以外の内容で、例えば遺言を書いた経緯や家族への感謝のメッセージなどのことです。
付言事項には、法的な効力がないため、相続人はその内容に必ずしも従う必要はありません。しかし、「全財産を長男●●に相続させる」という法的な内容のみが書かれた遺言書よりも、なぜそのような遺言を書こうと思ったのかという遺言者の想いが書かれている方が、相続人の受け取り方も変わる可能性があるため、心情に訴えることにより、遺留分の請求を回避するという狙いがあります。
具体的には、相続人への感謝の気持ちと「どうか、遺留分減殺額請求権の行使や遺言者の財産の分配等を請求しないで下さい。」とメッセージを残します。

しかし、あえて付言事項の中で「遺留分」について言及するとこで、相手方に遺留分という権利があることを知らせてしまうというデメリットもあります。付言事項を書く際には、その点にも注意が必要です。

まとめ

今回の記事のポイントは、下記の3つです。

  • 兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があるため、将来の紛争を避けるためにも、遺言を作成する際には遺留分に配慮する。
  • 相続法の改正により、遺留分は金銭債権化されたため、遺留分侵害額請求をされるおそれがある場合には、遺留分に相当する金銭の確保が必要となる。
  • 生命保険の活用は、遺留分対策としても相続税対策としても有効な手段である。 

今回の記事では、「遺留分」について説明していきました。
遺言書は大きく「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」に分けられますが、自筆証書遺言が選ばれる理由の多くは、費用を安く抑えられることにあります。さらに、2020年7月10日より法務局による自筆証書遺言の保管制度が始まりましたが、法務省が発表している遺言書保管制度の利用状況によると、開始以来1ヶ月約2,100件のペースで利用されています。自筆証書遺言の保管制度により、利便性が高まったことが要因と思われます。

しかし、自筆証書遺言の保管制度を利用しても、法務局が遺言の内容につきアドバイスをすることはできません。当然、遺留分など将来のリスクについて説明をしてくれることもありません。

生前対策をする目的は様々ですが、どのような理由があるにしろ、最終的に自分の想いが実現されることが生前対策の主たる目的のはずです。
目の前の費用だけで対策方法を検討するのではなく、どうすれば自分の想いが実現するのかに重きを置いて対策をすることが大切です。

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