やってはいけない障害のある子の預金の管理。名義預金の落とし穴

名義預金 落とし穴

コロナの影響により売上が減少している障害者就労施設は多く、B型事業所の約8割が平均3割の減収になっています。このような状況がいつまで続くかや、今後またいつ同じような状況になるかは誰にも予想できません。このようなことが起こると、障害のある子の親であれば「将来子どもがお金で困らないようにしてあげたい」と考える方も多いのではないでしょうか。

今回の記事のポイントは、下記の3つです。

  • 名義預金は、税務上のデメリットがあるので注意が必要。
  • 障害のある子の親が名義預金をしている場合、将来子どもが成年後見制度の利用を余儀なくされる可能性があることを認識する。
  • 障害のある子のためにお金を残す場合には、「成年後見制度」「子どもの年齢」「残す金額」の3つに注意して行う必要がある。

「子どものために使うお金だから」と、安易に子ども名義の口座にお金を預けることは危険です。
今回の記事では、障害のある子をもつ親が、子どものためにお金を貯める際に注意すべきポイントについて解説していきます。

名義預金とは?

名義預金とは、自分のお金を自分名義の口座ではなく、他人の名前の口座で管理している預金のことです。
例えば、親が子ども名義の口座を作り、そこに親のお金を預けることです。相続の場合では、実際には亡くなった方の財産であるのに、亡くなった方の配偶者や子ども名義で管理されていた財産のことを言います。
子どもが産まれると、将来の教育資金やお年玉などを貯めるために、子ども名義の口座を開設するという方もいるかもしれません。

 

名義預金のデメリットとは?

名義預金のメリットは「子どものためのお金である」ということが明確になることです。
しかし、それ以上にデメリットもあるため、安易に名義預金をすることには気をつけなければいけません。

名義預金のデメリットには、次の3つがあります。

(1)贈与とみなされる

お金を管理している口座が子どもの名義でも、お金の出どころが親であれば、親から子への贈与とみなされ、贈与税が課税されます。そのため、名義預金とみなされると子どもに贈与税が発生する可能性があります。
なお、年間110万円以下の贈与であれば、贈与税は課税されません。そ相続税対策として、例えば毎年100万円を10年間に渡って贈与し、合計1000万円を子どもに贈与するという場合もあります。(このような方法を暦年贈与と言います。

(2)親が死亡したときに、相続財産とみなされる

年間110万円以下で暦年贈与をした場合、贈与税がかからずに子どもにお金を贈与することができます。しかし、ここでも注意が必要です。たとえ、毎年贈与している金額が贈与税がかからない範囲内であったとしても、生前贈与とはみなされない場合があることです。それは、通帳・キャッシュカード・銀行印を親が管理していた場合や、子どもが贈与を受けたことを認識していない場合です。
子どもが未成年の場合や障害のある子の場合、親が通帳等を管理していることがほとんどだと思います。また、障害の程度にもよりますが、子どもが「自分は贈与を受けている」と認識することが難しい方もいるのではないでしょうか。そして、生前贈与とみなされないということは、子どもの財産ではなく親の財産と判断されるので、親が亡くなった際に相続財産となり遺産分割の対象となります。
つまり、障害のある子のためにお金を残す方法として、子ども名義の口座で管理をしている方の多くは、名義預金と判断されるということです。

(3)子どもが成人すると親がお金を引き出せない

親が子ども名義の通帳を作ることができるのは、親には「親権」があるからです。親権とは、親が子どもを代理して法律行為をしたり、子の財産を管理することができる権利のことです。
この親権は、子が未成年の間しかありません。日々の生活で子どもを育てて行く際に、親権を意識している方はまずいないと思います。
しかし、子どもが成人し親権が無くなると、キャッシュカードを使ってお金をおろすことはできますが、窓口でお金を引出したり、定期預金を解約することはできなくなります。銀行では、厳格に本人確認が求められるため、これらの行為は名義人本人でなければできないからです。

 

名義預金と成年後見制度との関係性

これまで名義預金と判断された場合のデメリットについてお伝えしましたが、名義預金か否かの判断をするのは税務署です。
たとえ名義預金と判断される方がいたとしても、税務署が1つ1つの家庭を細かく調査することは不可能です。そのため、税務署の調査が入るような方は、基本的には相続税が発生するような資産がある方ということになります。

ここで、「自分は相続税が発生するほどお金はないから大丈夫」と思った方も多いのではないでしょうか。
しかし、障害のある子の親なき後問題の視点で考えた場合には注意が必要です。
障害のある子の親なき後問題と、成年後見は切り離すことはできません。「できる限り自分が子どもの面倒を見ていく」と考えていても、親が子どもより先に亡くなる場合や、親が認知症になった場合には、成年後見という選択肢を迫られます。
つまり、障害のある子をもつ親は、必ず成年後見制度のことを考えて色々な対策を取らなければいけません。

そして、成年後見制度の視点から考えた場合、名義預金には次のような問題があります。

(1)親の相続財産と判断された場合、遺産分割協議が必要となる

先程も、子どもへの生前贈与が認められないと、親が亡くなった際に相続財産となり遺産分割の対象となるとお伝えしました。この場合に、障害のある子の親が遺言書を残していないと、障害のある子も含めた相続人全員で遺産分割協議をしなければならなくなります。
この遺産分割協議をするには、「判断能力」が必要となります。もし、相続人の中に判断能力がない方がいる場合、成年後見人を選任しなければ遺産分割協議はできません。
つまり、障害のある子どもが判断能力がないと診断されれば、成年後見制度の利用を余儀なくされてしうということです。

(2)銀行での手続きのために成年後見人の選任が必要となる

銀行では、厳格に本人確認が求められるとお伝えしました。もし、成人の障害のある子が銀行に行き、銀行が障害のある子(口座の名義人)には判断能力がないと判断するとどうなるでしょうか。
障害のある子に成年後見人を付けなければ、お金の入出金をすることができなくなります。
日常的にキャッシュカードを利用していると見落としがちですが、親がお金を自由に引き出せるのは、子どもが未成年の間だけなのです。お金を貯める目的である「将来のため」とは、多くの方が、親が高齢になった場合や親が面倒を見ることが難しくなった時を想定しているのではないでしょうか。
つまり、子どもが成人し実際にお金が必要になった時には、成年後見制度の利用を余儀なくされてしまう可能性があるということです。

(3)流動資産が多いと、親が子どもの成年後見人になることは難しい

万が一、子どもに成年後見人が必要になった場合でも、「自分が子どもの成年後見人になりたい」と考える親御さんは多いと思います。
しかし、障害のある子が多額のお金を持っている場合、親族が成年後見人に選任される可能性は低くなります。
各家庭裁判所によって基準は異なりますが、預貯金や株式等の流動資産が概ね1,000万円以上ある場合には、専門職後見人が選ばれる可能性が高くなります。もし、親族が後見人になることができる場合でも、裁判所の関与なくしてお金を使うことが難しくなり、今までのように柔軟にお金を使うことはできなくなります。つまり、子どものためと思い貯めていたお金が、子供名義の口座で管理されていたという理由だけで、親がお金の使いみちを自由に決めることができなくなるのです。
そのため、もし子ども名義の口座で管理する場合には、金額が大きくならないように注意をしなければいけません。

(4)障害のある子に相続人がいない場合、遺産は国のものになる

障害のある子がお金を残した状態で亡くなってしまうケースもあります。その場合、障害のある子に相続人がいれば、遺産は相続人に引き継がれますが、相続人がいない場合、残された遺産は国のものになります。
障害のある子に遺言を書くだけの能力がある場合は、遺言書を作成することで自分の希望する人や法人に遺産を渡すことができます。しかし、遺言を書く能力がない場合には何も対策をすることができません。
親としては、子どものために貯めたお金が国に渡ってしまうということには納得ができないと思います。親の口座で管理していたお金であれば、親の相続財産と判断されるので、子どもがお金を残して亡くなる場合を想定した対策も可能です。
しかし、子ども名義の口座で管理していた場合には、親が子どもに代わって対策をすることはできないのです。

 

まとめ

今回の記事のポイントは、下記の3つです。

  • 名義預金は、税務上のデメリットがあるので注意が必要。
  • 障害のある子の親が名義預金をしている場合、将来子どもが成年後見制度の利用を余儀なくされる可能性があることを認識する。
  • 障害のある子のためにお金を残す場合には、「成年後見制度」「子どもの年齢」「残す金額」の3つに注意して行う必要がある。

今回の記事では、障害のある子をもつ親が、子どものためにお金を貯める際に注意すべきポイントについて説明しました。

障害のある子をもつ親御さんは、「成年後見制度は利用したくない」という方が多くいらっしゃると思います。そのため、親なき後問題では、必ず成年後見のことを考えた対策を取る必要があります。
子どもが未成年の間は、親権を利用して様々な対策をとることができます。しかし、子どもが成人してしまうと、法律の壁により親の想いとは違う方向に進んでしまうこともあります。
親なき後問題では、「成年後見制度」「子どもの年齢」「残す金額」の3つに注意して対策をすることが大切です。

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