障害者の親なきあと問題に悩む親がとるべき認知症対策の3つのポイント

障害のある子をもつご家族は、子供の将来のことを考えて、成年後見制度や親なきあとについて勉強される方も多いと思います。
しかし、早い段階で勉強はされていても、「実際に行動に移すのは親が高齢に差し掛かってから」という方も多いのではないでしょうか?

今回の記事のポイントは下記の3つです。

  • 成年後見制度の基本知識を身に付ける。
  • 親なきあとの対策も、親の認知症対策も早期が大切。
  • 早い段階で第三者への支援に切り替えることを検討する。

親なきあと対策では、子供だけでなく「親自身の対策」も忘れてはいけません。今回の記事では、成年後見制度の基本をおさえながら、早期に対策をとることの重要性を解説していきます。

成年後見制度の利用状況

成年後見制度の利用状況をご存知でしょうか?成年後見制度の利用者数は年々増加傾向にあります。


厚生労働省公式HP「成年後見制度の現状(令和3年3月)」より抜粋)

利用者数が増加している要因の一つは、高齢化にともない認知症患者が増加していることが挙げられます。2025年には、認知症患者は約700万人となり、65歳以上の5人に1人が認知症になる計算となります。

また、知的障害者数も増加しており、平成23年と比較すると約34万人増加しています。


厚生労働省公式HP「成年後見制度の現状(令和3年3月)」より抜粋)

上記のグラフからも分かるように、障害のある方の年齢が高いということは、その子を支えている親の年齢も当然高くなります。そして、子供を支える親の年齢が65歳以上になれば、親が認知症になるリスクが高まります。

つまり、親子ともに成年後見制度を利用するご家族が、今後は増える可能性があります。そのため、超高齢化社会と言われる現代においては、障害のある子の親なきあと問題を考える際に、子供のことだけではなく、親自身の認知症対策についても考える必要があります。

 

成年後見制度の基礎知識

成年後見人には誰が選ばれるの?

成年後見人を選ぶのは、家庭裁判所です。申立ての段階で、成年後見人の候補者を立てることはできますが、申立人が希望する人が必ずしも選任されるとは限りません。そのため、本人の親族がなる場合もあれば,弁護士,司法書士,社会福祉士などの専門家が選ばれる場合もあります。

そして、親族(配偶者、親、子、兄弟姉妹)が成年後見人等に選ばれたものが全体の約22%、親族以外の第三者が選ばれたものが全体の約78%となっています。つまり、約8割が自分の知らない第三者(専門職等)が選ばれています。

成年後見人の仕事はいつまで続くの?

成年後見人の仕事は、本人の死亡または本人の能力が回復するまで続きます。「遺産分割をする」や「不動産を売却する」という手続きをきっかけとして、成年後見の申立てがされる場合がありますが、これらの手続きが終了しても、成年後見人の仕事は終了しません。

成年後見人の報酬

親族が成年後見人等になる場合でも、専門職が成年後見人などになる場合でも、報酬を受取る場合には、家庭裁判所に対して、「報酬付与の申立て」を行います。一般的に、親族が成年後見人等になる場合には、報酬を受け取らないケースも多いと思いますが、専門職が成年後見人等についた場合には、必ず報酬が発生します。

報酬には、通常の後見事務を行った場合の「基本報酬」と、身上監護等に特別困難な事情があった場合の「付加報酬」があります。報酬については、法律で基準が定められているわけではなく、被後見人等の財産状況の内容などを総合的に判断して家庭裁判所が判断しますが、基本報酬のめやすは月額2万円程度とされています。そして、この報酬は、被後見人(支援を必要とする本人)の財産から支払われます。

 

親族以外の第三者が成年後見人に選任されるデメリットは?

成年後見制度の利用者数は年々増加していますが、成年後見制度に対して悪いイメージをもっている方も多く、社会全体で見た場合、その普及率はとても低いです。その要因としては、親族や自分が希望した人が選ばれるとは限らないという点が大きいと思われます。そして、第三者が成年後見人に選ばれた場合、成年後見人に対する報酬が発生します。

障害のある方は、本人の能力が回復する可能性が低いため、第三者が選任された場合は、基本的に本人が亡くなるまで成年後見制度が続き、その間ずっと報酬を払い続けなければなりません。そのため、利用した年齢が低いほど、本人の財産が減少していくことになります。障害のある子をもつ親は、本人や家族が将来お金で困らないかを心配される方も多いと思うので、このような理由で、成年後見制度の利用をためらう方も多いのではないでしょうか。

 

なぜ障害のある子の親は認知症対策をする必要があるのか

人生100年時代と言われ、超高齢化社会の現代においては、どのご家庭も認知症対策をすべきです。しかし、高齢者自身が自ら認知症対策について考えるという方はごく少数で、ほとんどが親の認知症を心配する子供が親や家族を説得し、対策を取ることがほとんどです。

しかし、障害のある子を持つご家族で、一人っ子の場合は、親の認知症対策について考えてくれる子供がいません。親の物忘れが増えてきたなどの些細な変化は、一番近くにいるご家族がよく分かります。友人や近所の方など社会との繋がりがあっても、本人の財産管理にまで積極的に関わることは難しいと思います。
そのため、そのようなご家族は、子供のことに加えて自分自身もことも考えていかなければなりません。

ここで一番重要なのは、「認知症対策は元気なうちにしかできない」ということです。

認知症対策と言っても、様々な方法がありますが、いずれの方法をとる場合でも、それらは全て法律行為であり、法律行為をするうえでは意思能力が必要とされるため、高齢になってから対策を取ろうとしても手遅れになるケースもあります。
子供の親なきあと対策も、自分の認知症対策も、親が元気なうちにしかできません。

つまり、親なきあと対策も認知症対策も、対策を取るのに遅すぎることはあっても、早すぎることはないということです。

 

第三者への支援に切り替えるタイミング

障害のある子を持つ親は、周りに迷惑をかけたくないので、ギリギリまで自分で面倒をみたいと思われる方も多いのではないでしょうか。そのため、自分が成年後見人の職務を果たせなくなった時に、第三者に成年後見人を変更するのが理想的かもしれません。

しかし、自分が高齢になり認知症になっていた場合、新しく引き継ぐ第三者に「子供の好きなものや嫌いなもの」、「これだけは尊重して欲しいと思うこと」をしっかりと説明することができるでしょうか。自分の子供のことを「安心して任せられる人か」を見届けることができるでしょうか。

現在では、約8割が親族以外の第三者が成年後見人等に選ばれていますが、2019年3月に厚生労働省で行われた専門家会議で、最高裁判所が「成年後見人は親族が望ましい」との考え方を示しました。そのため、今後は親族後見人が増えていく可能性はあります。しかし、すぐにそのような方針に変更されるかは分かりません。

また、親族後見人が増えるようになっても、いずれは第三者に支援をお願いするときが訪れます。子供のことを考えた場合、自分がある程度元気なうちに、第三者への支援に切り替え、安心して任せることができるかを見届けてあげる期間を設けることも大切なことかもしれません。

経済的な理由から、やはりできる限り自分で面倒をみていきたいという方は、時間はかかるかもしれませんが、安心して任せられる専門家を見つけておくことも大切です。いずれの場合も、ご家族だけで問題を抱え込まず、頼れる専門家や社会とのつながりをもっておくことは重要です。

 

まとめ

今回の記事のポイントは下記の3つです。

  • 成年後見制度の基本知識を身に付ける。
  • 親なきあとの対策も、親の認知症対策も早期が大切。
  • 早い段階で第三者への支援に切り替えることを検討する。

今回の記事では、障害者の親なきあと問題に取り組む親が、自分の認知症対策をするべき理由を解説してきました。

頼れる専門家を見つけ、社会とのつながりをもっておくことは、時間がかかり簡単なことではないかもしれません。しかし、時間がかかるからこそ、今すぐ行動して欲しいことでもあります。
ぜひ一度専門家に相談をしてみてください。

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