成年後見を使わない!障害のある子の自立を促すお金の管理法

知的障害のある子を持つ親であれば、子供のお金の管理に不安を感じるのではないでしょうか。
ある程度は本人に管理をさせ、金銭管理の勉強をさせたいが、借金をしたり、浪費をしないだろうかと心配になると思います。

今回の記事のポイントは、下記の3つです。

  • 日常生活自立支援事業は、利用する本人に契約が結べるだけの判断能力がなければ利用することができない
  • 日常生活自立支援事業を早期に利用することは、本人の自立にもつながる
  • 親以外の第三者や地域とのつながりをもつことは、親なき後問題の対策としてとても重要

本人に代わって財産管理を行うものとして、「成年後見制度」があります。
しかし、成年後見制度を利用すれば、家庭裁判所に定期的な報告が必要になったり、親族ではない専門家が選任されるというデメリットがあります。

そこで、今回の記事では、成年後見と似た制度である「日常生活自立支援事業」について解説していきます。

日常生活自立支援事業とは?

日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うものです。(厚生労働省ホームページより引用)

「福祉サービスを利用したいけれど、手続きの仕方が分からない」「銀行に行ってお金をおろしたいけれど不安だ」という時に、福祉サービス利用の申し込みや、契約手続きの援助、日常生活に必要なお金の出し入れなどをサポートしてくれます。

 

利用方法や対象者は?

日常生活自立支援事業を利用したい場合、どのような手続きが必要となるのでしょうか。
日常生活自立支援事業は、各地域の社会福祉協議会が行っているサービスです。そのため、まずは自分や子供など利用したい方が住んでいる地域の社会福祉協議会に相談します。そこで、専門的な知識を持った専門員が相談に応じ、困っていることや希望内容に応じて、どのような手伝いをどれくらいの頻度で行うかなどの「支援計画」を本人と一緒に決めていきます。

次に、利用者と社会福祉協議会との間で、利用契約を結びます。そして、結ばれた契約内容にそって、サービスが開始されます。
では、どのような方がこの制度を利用できるのでしょうか。

対象者は、次のいずれにも該当する方とされています。
①認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等の判断能力が不十分な方であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方
②本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方

なお、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を持っていたり、認知症の診断を受けている方に限られるものではないとされています。

 

成年後見制度との違い

本人に代わって財産を管理したり、契約を結ぶものとして、「成年後見制度」がありますが、2つの制度には次のような違いがあります。

日常生活自立支援事業 成年後見制度
利用内容 福祉サービスの利用援助や日常的金銭管理、書類の預かりサービス 財産管理や身上監護に関する契約等の法律行為全般
手続き機関 社会福祉協議会 家庭裁判所
対象者 判断能力が不十分な方

(判断能力が全くない方は利用できない)

判断能力が不十分な方、全くない方
支援者 社会福祉協議会の職員 家庭裁判所が選任した者(親族がなる場合もある)
監督機関 運営適正化委員会 家庭裁判所

この成年後見制度との大きな違いは、判断能力が全くない方は利用できないこと、サポートしてもらえる範囲が成年後見制度と比べて狭いことにあります。
2つの制度の使い分けを、具体的なケースで考えてみます。

<ケース1>
ひとり暮らしのA子さんは、ホームヘルパーを利用したいと思っていましたが、その手続が分かりません。また、通帳の管理にも不安がありましたが、近くに子どもは住んでおらず、頼れる人はいません。

<日常生活自立支援を利用した場合>

福祉サービスの利用援助をしてもらうことがでるため、A子さんに必要な介護サービスを受けられるようになります。また、通帳・銀行印の預かりサービスを利用することで、通帳等の管理の面でも不安がなくなり、お金を引き出す際には支援者に同行してもらうこともできるため、安心して生活することができます。

<成年後見制度を利用した場合>

A子さんの親族が成年後見人になった場合、親族が銭管理を行いますが、あくまで親族の都合の良いときにしか動いてもらうことはできず、日常生活自立支援のように自分が望む時に支援をしてもらえるわけではありません。また、後見人となる親族がいない場合、第三者が後見人になりますが、後見人に支払う報酬も日常生活自立支援と比べて高額になります。

A子さんが、できる限り自分で生活をしていきたいと考えている場合、成年後見制度のように本人に代わって手続きを行うのではなく、あくまで本人をサポートするというスタイルの日常生活自立支援の方が向いていると言えます。

<ケース2>
知的障害のあるBさんは、グループホームでひとり暮らしをしています。就労支援施設で働いていますが、浪費癖があります。また、両親は死別しており、頼れる親族はいません。

<日常生活自立支援を利用した場合>

通帳と銀行印を預けることができ、Bさんがお金を引き出す際は、何にいくら使うのかを支援員に確認されます。そのため、収入に合わないものや不要な支出であれば、支援員が認めず、不要な支出を防ぐことができます。Bさんは、収入に見合ったやりくりができるよう支援してもらうことで、自立した生活がおくれるようになります。

<成年後見制度を利用した場合>

Bさんには、親族がいないため第三者が後見人に選任されます。もし、弁護士・司法書士の専門職が後見人に選任された場合、おそらく金銭管理については、専門職に代理権が付けられることになります。なぜなら、代理権がない場合、後見人だけでお金の出し入れをすることができず、業務上不都合な場合があるからです。
また、専門職が後見人に付いた場合、後見人の目的は、自立を促すことではなく、本人の財産を減らさないことになってしまいます。専門職が後見人になることで守られる部分も大きいですが、同時に自主性や自立という側面は奪われてしまう傾向があります。

周りの人間の、最低限の支援があれば自立して生活できるような方にとっては、成年後見制度は過剰な支援となってしまいます。

 

利用料はいくら?

日常生活自立支援事業を利用したい場合に気になるのは、やはりその費用だと思います。
各社会福祉協議会によって、利用料は異なりますが、1時間あたり平均1,200円とされています。その他に、通帳や印鑑など書類を預かる場合は、1ヶ月500円とされています。

これに対し、成年後見制度を利用した場合、親族が後見人になる場合は、基本的に報酬が発生することはありません。しかし、専門職などの第三者が選任された場合、財産の金額などにより異なりますが、目安として毎月2万円の報酬が発生します。後見人に支払う報酬は月ごとの報酬のため、利用する頻度や時間が少ない方にとっては、日常生活自立支援事業を利用した方が圧倒的にかかる費用は安くなります。

 

日常生活自立支援事業を利用するメリットは?

仕事をしている知的障害者の方であれば、どうしてもお金の管理は切り離すことができません。親が管理したり、手伝うことはできますが、「親なき後」のことを考えた場合、子供が自分でお金の管理をできるようになることが理想ではないでしょうか。そのような場合に、ぜひ日常生活自立支援事業を利用を検討してみてください。

福祉サービスなどは、必要に迫られた時や困った時に利用するものというイメージがある方もいると思います。
しかし、たとえ親が支援することが可能な状況であったとしても、早期にこのサービスを利用することには、次のようなメリットがあります。

親ではない第三者の支援のもと、お金の管理を学ぶことができる

親であればどうしても甘えが出てしまうかもしれません。あえて早い段階から、親の手から離れたところで金銭管理を学ぶことは、子供の自立にもつながります。
また、成年後見制度は利用を開始したら、原則的には途中でやめることができませんが、日常生活自立支援事業であればいつでもやめることができます。
支援に必要な費用も安いため、お試しで金銭管理を学ばせたいという方や収入が少ない方でも安心して利用することができます。

実際に、浪費癖のある知的障害者の方が、日常生活自立支援事業を利用して給与の範囲内で生活していくことを学び、安定した生活を送ることができるようになったという方もいます。

親や親族以外の福祉関係者に、子供の存在を知ってもらうことができる

親なき後問題においては、地域でのつながりを多くもつことが大切であると言われています。しかし、自分の子供に障害があることを積極的に話したいと思わない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方であっても、福祉関係者に子供のことを話すのはハードルが低いと思います。
子供の存在を、親ではない第三者に知ってもらうことで、万が一親に何かあった場合に子供を助けてもらうことができます。

また、福祉関係者とつながりを持つことで、さまざまな制度の情報を得ることもできます。どんなに良い制度があったとしても、それを知らなければ使うことはできないため、さまざまな制度を知っておくことはとても重要です。

将来、成年後見制度の利用が必要になった場合に、子供の特性や性格などを伝えることができ、後見人への引き継ぎがスムーズに行える

成年後見制度を使いたくないと思っている方でも、「将来的には成年後見人が必要になる時が来る」と考えて、準備をしておくことが親なき後対策として重要です。
親が高齢になった時に、子供に成年後見人が必要となった場合、親が後見人に選ばれる可能性は低くなります。第三者が後見人に選ばれた場合、今まで子供との関係性がなかった人が突然、子供のお金の管理を行います。お子さんによっては、毎月楽しみにしていたことや好きなものがあるかもしれません。
しかし、お子さんのことを何も知らない第三者の後見人は、「無駄な支出」としてお金を出すことを許可しないかもしれません。
親としては、このような対応に不満を感じるかもしれませんが、本人の財産を守ることが重視されるため、お子さんの特性や今までの生活スタイルを何も知らない立場では、このような判断になってしまうことがあります。

もし、親自身が認知症になってしまった場合や亡くなった場合、誰が後見人となってくれる第三者に、子供の性格や尊重してほしいことを伝えることができるでしょうか。地域とのつながりを多く持つことにも関係しますが、第三者にも子供の特性を知ってもらい、親以外の人から子供のことを伝えてもらえる環境を整えておくことは、障害のある子供にとっても重要なことです。

また、成年後見の申立てをする場合、「後見人候補者にはこのような人になって欲しい」という希望を伝えることはできます。希望を伝えても必ずそのような人が選ばれるとは限りませんが、できる限りの配慮はしてもらえるため、親も子供も安心して任せられる人はどのような人かを伝えられることは、成年後見の申立ての際にもとても重要なポイントとなるのです。

 

まとめ

今回の記事のポイントは、下記の3つです。

  • 日常生活自立支援事業は、利用する本人に契約が結べるだけの判断能力がなければ利用することができない
  • 日常生活自立支援事業を早期に利用することは、本人の自立にもつながる
  • 親以外の第三者や地域とのつながりをもつことは、親なき後問題の対策としてとても重要

今回の記事では、日常生活自立支援事業について説明しました。

成年後見制度は良い部分もありますが、年齢が若い障害者の方には向いていない場合や、早い段階では必要ない場合も多くあります。しかし、そのような方でも親なき後対策として、子供が自立できる環境や、親が支援できなくなった場合に、次の支援者へ情報を伝えられる環境を整えておくことは非常に重要です。
家族だけで問題を解決しようとせず、利用できる福祉サービスを積極的に活用することも検討してみてください。

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