「タダ」ではできない!?知っておくべき成年後見の費用と報酬

久しぶりに実家に帰ってみると、高齢の親の物忘れがひどくなっていたり、訪問販売などで購入した商品が大量にあり、このままで大丈夫だろうか…と心配になる方もいるのではないでしょうか。
例年であれば、お盆やお正月の帰省時にこのような相談が増えます。しかし、今年はコロナの影響で帰省を控える方も増えるかもしれません。会えない期間が長くなればなるほど、親の変化に気づくのが遅れてしまいます。
そこで、このような高齢者の方を守る制度として「成年後見制度」があります。

今回の記事のポイントは、下記の3つです。

  • 専門家に成年後見の申立てを依頼しない場合でも、約1万5千円ほどの費用がかかる。
  • 専門家が成年後見人になった場合には、めやすとして毎月2万円の報酬が発生する。
  • 成年後見制度利用支援事業により、申立手数料や後見人の報酬等、成年後見制度の利用に係る経費の一部が助成される場合がある。

成年後見制度の利用を考えた場合に、気になるのは「費用」ではないでしょうか。今回の記事では、成年後見制度の利用にかかる費用について解説していきます。

成年後見の申立ての時にかかる費用は?

成年後見を利用したい場合、家庭裁判所に申立をしますが、「タダ」で申立てができるわけではありません。申立てをする際には、次のような費用がかかります。

(1)申立手数料(収入印紙)

後見又は保佐開始 800円
保佐又は補助開始+代理権付与又は同意見付与 1,600円
保佐又は補助開始+代理権付与+同意見付与 2,400円

(2)後見登記手数料(収入印紙)
   2,600円

(3)連絡用の郵便切手
   4,300円(岐阜家庭裁判所の場合。家庭裁判所によって異なります)

(4)鑑定費用
   5万円~10万円(医師によって異なります)

成年後見制度は、判断能力の程度に応じて「補助」「保佐」「後見」の3つの類型に分かれますが、それぞれの類型に応じて申立て手数料が異なります。
また、後見開始の審判がされると、法務局に「成年後見登記」がされます。成年後見登記には、本人の氏名・住所・生年月日や、後見人等の氏名・住所・生年月日などが記載されます。この登記がなければ、後見人等が本人に代わって手続きを行う場合に、自分が後見人等であることを証明することができないため、必ず必要なものとなります。

鑑定については、必ずされるわけではありません。裁判所鑑定を行うかの判断をします。

なお、申立てにかかる費用は、原則、申立人の負担となります。そのため、勝手に本人の財産から支出することはできません。
ただし、申立時に家庭裁判所に納める収入印紙代(申立手数料と登記手続費用)や郵便切手代、申立後に鑑定が必要になった場合の鑑定費用については、申立人から本人負担を希望する申出があった場合、家庭裁判所の判断で、本人に負担させる審判をする場合もありますが、希望しても認められない場合もあるので注意が必要です。

 

成年後見の申立て時に必要な書類は?

成年後見の申立てをする際には、申立書のほかに必要な書類を提出しなければいけません。必要書類のうち費用がかかるものには、次のようなものがあります。

(1)本人の登記されていないことの証明書 300円
(2)本人の戸籍謄本 450円
(3)本人の住民票 300円
(4)申立人の戸籍謄本 450円
(5)候補者の住民票 300円
(6)不動産登記事項証明書(不動産がある場合) 600円
(7)診断書 数千円~

(1)の登記されていないことの証明書では、「本人が成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする記録がない」という証明を取得します。
この証明書は、窓口の場合は、最寄りの法務局の「本局」で取得できます。あくまで本局でしか取得ができないため、岐阜県であれば岐阜地方法務局でしか取得することができません。そのため、郵送で請求する場合には、東京法務局後見登録課に郵送請求します。

ここまで、申し立ての際にかかる費用をお伝えしましたが、医師の鑑定が不要な場合で、およそ1万5千円前後の費用がかかることになります。

 

専門家に申立てを頼んだ場合の費用は?

成年後見の申立書は、自分で作成することもできます。しかし、後見の申立てには上記にあげた書類の他にも、財産目録や収支予定表、申立ての事情説明書など自分で記入しなければいけない書類もたくさんあります。そのため、自分で申立書を作成するのが難しい場合は、申立書類の作成を司法書士、弁護士の専門家に依頼することもできます。
後見の申立てを専門家に依頼した場合、10万~30万円ほどの報酬がかかります。

申立てにかかる実費と比べると高額に感じると思いますが、専門家に申立てを依頼するメリットには、次のようなものがあります。
(1)必要書類を集める時間など、申立てまでにかかる期間を短縮できる。
(2)後見制度のメリット・デメリットをしっかり理解したうえで、申し立てることができ
(3)受理面談に専門家が同行し、サポートすることができる

書類の書き方など裁判所がサポートをしてくれますが、やはり専門的な知識がないと難しい部分もあるため、専門家に相談することも検討してみてください。
ただし、申立てに際して必要な収入印紙代などとは異なり、専門家に支払う報酬は申立人の負担となり、本人に請求することはできないので注意してください。

また、「申立書を自分では作れないけど、報酬を払うだけのお金もない」という方もいると思います。このような場合でも、一定の収入等の要件を満たす方であれば、法テラスを利用することで、専門家への報酬を立て替えてもらうことができます。法テラスを利用した場合、法テラスに対して、分割して立替金を返済することになりますが、生活保護を受給されている場合等では償還免除になる場合もあります。

 

専門家が成年後見人になった場合の費用は?

親族ではなく、司法書士・弁護士などの専門家が後見人に選ばれた場合、後見人への報酬が発生します。報酬には、「基本報酬」と「付加報酬」があります。
基本報酬とは、通常の後見事務を行った場合の月々の報酬です。各裁判所によって異なりますが、次のような金額を裁判所がめやすとして示しています。

本人の財産額 報酬月額
1,000万円以下 2万円
1,000万円~5,000万円まで 2~3万
5,000万円以上 4~5万

付加報酬とは、本人の身上監護等に特別困難な事情があった場合に、上記基本報酬額の50パーセントの範囲内で相当額の報酬が加算されるものです。例えば、施設の入所契約を行った場合や、不動産を売却した場合などがあります。

後見人に支払われる報酬は、当然本人の財産から支払われます。しかし、財産が少ない方の場合、たとえ専門家であっても報酬が受け取れない場合もあります。
そこで、このような方の成年後見制度の利用を公的に支援する制度として、「成年後見制度利用支援事業」があります。

成年後見制度利用支援事業とは、成年後見制度の利用が必要な方で身寄りがないなど、親族からの申立てを行うことが困難な場合に、市区町村長が代わって申立てを行ったり、本人等の財産等の状況から申立て費用や成年後見人等への報酬を負担することが困難な場合に、その費用の助成を行うことで、成年後見制度の利用促進を図る事業のことです。

まとめ

今回の記事のポイントは、下記の3つです。

  • 専門家に成年後見の申立てを依頼しない場合でも、約1万5千円ほどの費用がかかる。
  • 専門家が成年後見人になった場合には、めやすとして毎月2万円の報酬が発生する。
  • 成年後見制度利用支援事業により、申立手数料や後見人の報酬等、成年後見制度の利用に係る経費の一部が助成される場合がある。

今回の記事では、成年後見制度の利用にかかる費用について説明しました。
親族が近くにいない場合や独居老人の場合、成年後見制度を利用した方がよい方は多くいらっしゃいます。しかし、いざ成年後見を申し立てようと思っても、申立てに必要な書類を準備するのが難しい場合や、申立人となる親族とはいるがお金を払うことができない場合など、簡単には手続きに入れないケースもあります。

このように申立てが困難な場合でも、法律の扶助を受けることで解決できる場合もあるため、申立てはできないと諦めて問題を放置せず、まずは専門家に相談してみてください。

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