相続人は誰?法定相続人とは?子の有無、再婚など事例をもとに解説

みなさんは「自分の相続人は誰か」「両親が亡くなった場合、誰が自分と共同相続人になるのか」を考えたことがありますか?相続対策だけでなく、認知症対策やおひとりさまの終活を考える場合、まずは「法定相続人の確定作業」から始まります。

今回の記事のポイントは、下記の3つです。

  • 養子縁組や認知など戸籍を確認しなければ分からないこともあるので、法定相続人が誰になるのかという確認作業は、必ず戸籍を取得して行う。
  • 子どもがいる場合、どこまでの範囲の子に相続権があるかは、戸籍でしか把握することができないので、思い込みで判断せず専門家に確認することが重要。
  • 離婚歴のある方と子どもがいない夫婦は、将来相続で揉めるリスクが高いため、遺言を作成する。

人間誰しも必ず死を迎えるので、相続に関する知識は基礎知識として知っておくべきことですが、大学で法律を勉強していた方以外は、自ら調べない限り学ぶ機会すらないのが現状ではないでしょうか。
「生前対策なんて必要ない」「認知症は自分には関係ない」と考えている方でも、自分が思いもしなかった相続人がいることが分かれば必然的に何かしらの対策が必要となります。そのため、自分が亡くなった場合や自分の両親が亡くなった場合に、誰が相続人になるのかを知ることはとても重要なことです。 

今回の記事では、生前対策を検討する際に重要となる「法定相続人」について解説していきます。

法定相続人と法定相続分

法定相続人

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。つまり、亡くなった人(被相続人)の財産を受け取る権利がある人です。
亡くなった人の配偶者は常に相続人となります。
配偶者以外の相続人の順位は下記のように民法で定められています。
・第1順位 子、子が被相続人より先に死亡している場合は子の子(孫)
・第2順位 父母や祖父母
・第3順位 兄弟姉妹

 第1順位に当てはまる人がいればその人が相続人となり、第1順位に当てはまる人がいなければ第2順位、第2順位に当てはまる人がいなければ第3順位というように、順番に確認していきます。

次に、法定相続分とは、被相続人の遺産をどれだけ受け取ることができるのかについて、法律上定められた割合のことです。遺言書がある場合には、遺言の内容に従って遺産分割をします(遺言は、法定相続分に優先します)。遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議をする必要がありますが、その際に1つの「目安」となるのが法定相続分です。法的な拘束力はないので、必ず法定相続分通りに遺産分割をしなければいけないということはありません。

法定相続人とそれぞれの法定相続分をまとめると、以下のようになります。
法定相続分

なお、同順位の相続人が複数いる場合(子どもや兄弟姉妹が2人以上いる場合など)は、法定相続分を人数で分割したものが、それぞれの法定相続分となります。

相続における「子」の範囲

子の範囲

例えば、自分の両親が亡くなった場合に「子どもが相続人となる」ということは相続の勉強をしていない方であってもご存知だと思います。では、相続における「子」とはどこまでの範囲を意味するのでしょうか。
親から見た場合、「子」には(1)実子(2)連れ子(3)養子(4)隠し子 の4つの場合があります。
実子と養子は、必ず相続人となります。そして、実子には、異母兄弟や異父兄弟も含まれます。
つまり、自分の親に離婚歴があり、親が再婚し再婚相手との間に子どもがいれば、親が亡くなった際には、再婚相手との間の子どもも共同相続人となります。両親が離婚後も、両親との関係が良好でそのような情報があれば良いですが、何も接点がない場合、自分が知らない間に相続人が増えていることもあるということです。

また、「連れ子」と「隠し子」にも注意が必要です。連れ子の中でも「養子縁組している子」は相続人となり、隠し子の中でも「認知されてる子」は相続人となります。つまり、たとえ両親が再婚後に連れ子と生活を共にしていても、養子縁組をしていなければ連れ子は相続人にはなれず、たとえ養育費を受け取っていても、認知されていなければ隠し子は相続人になることはできません。

では、養子縁組や認知は、どのようにして知ることができるのでしょうか。養子縁組と認知は、いずれも戸籍でしか確認することはできません。そして、ここで注意が必要なのが、戸籍は今現在のものを確認するだけでは足りず、出生から今現在(又は亡くなった時)までの全ての戸籍を取得しなければならないということです。なぜなら、戸籍は法律による改正や転籍などにより、その都度新しいものが作られますが、養子縁組や認知に関する事項は、新しい戸籍が作られた時には記載されないからです。そのため、現在の戸籍を見て安心していても、古い戸籍を確認したら養子縁組や認知をしていたということもあります。

実際にあったケースとして、親の相続手続きをするために相続人の戸籍を取得したところ、相続人が養子縁組をしていたことがありました。亡くなった親に養子がいたわけではないので、親の相続の際には問題は起きません。しかし、相続人が亡くなる際には問題となることがあります。

相続関係図

このケースでは、相続人には元配偶者との間に実子がいましたが、その後再婚し、再婚相手の連れ子が未成年であったため、養子縁組をしていました。その後、再婚相手とも離婚しましたが、その際に養子縁組はそのままの状態にしていました。養子縁組に関しては、間違った認識をしている方が多いので注意が必要ですが、「婚姻・離婚」と「養子縁組・離縁」は全く別のものです。

連れ子がいる相手と婚姻しても、自動的に連れ子と養子縁組がされるわけではありません。それは、子どもが未成年であっても同じです。それと同様に、離婚をしても自動的に養子縁組が解消されることはなく、連れ子との養子縁組を解消したければ、「養子離縁届」を別途する必要があります。子どもが未成年の間は、親権者が子どもに代わって離縁の手続きをすることができますが、子どもが成人した後に離縁する場合は、養子と養親の2人で共同して離縁の届出をする必要があります。後から手続きをしようとした場合、養子の現住所が分からなかったり、相手が離縁を拒否したりと、スムーズに離縁できないことも考えられます。そのため、離婚と同時に養子縁組も解消したい場合には、離婚届と一緒に養子離縁届を出すことも忘れてはいけません。

このケースでも、親にそのような知識がなかったため、養子離縁届はされていませんでした。もし、何も対策をしないまま相続が発生したら、実子と養子で遺産分割協議をしなければいけません。相続人名義の土地の上に実子が家を建てていたため、遺産分割協議が整わなければ、実子は自宅の敷地をスムーズに相続できないリスクがありました。

このように、勘違いから自分が認識しない相続人がいる可能性もあります。また、たとえ戸籍を取得しても、戸籍を読み解くことは一般の方では難しいものです。そのため、相続人の調査をする際には、自分の思い込みで判断せず必ず戸籍を確認し、その戸籍の確認作業は専門家に依頼することをオススメします。

離婚歴がある方、子なし夫婦の注意点

注意点

「離婚歴がある方や子どもがいない夫婦は、遺言を作成しましょう」とよく言われます。その理由としては、法定相続人が複雑になるからです。先程も、「遺言は法定相続分に優先する」とお伝えしましたが、遺言書があれば望まない相続人に財産が渡ることを防ぐことができますが、遺言がなければ、遺産分割協議をするしかありません。

相続関係図

現在の配偶者であるBは相続人となりますが、元配偶者Aは相続人とななりません。子どもに関しては、異母兄弟や異父兄弟も相続人となります。そのため、C・D・Eの全員が相続人となります。Fは再婚相手(B)の連れ子ですが、養子縁組をしていないため、相続人にはなりません。
配偶者Bの法定相続分は、2分の1。子どもであるC・D・Eの法定相続分は、各6分の1ずつとなります。

もし、このケースで被相続人が遺言書を残していないと、B・C・D・Eの4人で遺産分割協議が必要となります。B・E・Fが被相続人名義の自宅に住んでいる場合、C・Dの同意がなければ自宅の名義を取得することもできません。また、相続が開始した時にC・Dが未成年の場合、C・Dは自ら遺産分割協議に参加することができないため、親権者が子どもに代わって遺産分割協議を行います。C・Dの親権者が元配偶者Aである場合、元配偶者Aと現在の配偶者Bが一緒に遺産分割協議をしなければならない状況となってしまいます。

次に、子どもがいない夫婦が亡くなった場合の相続人は、次のようになります。
相続関係図

配偶者Aは相続人となります。被相続人に子どもがおらず、両親も亡くなっている場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。このケースでは、B・Cが相続人となりますが、Bが被相続人より先に亡くなっている場合、Bの子であるDが相続人となります(このような相続を代襲相続と呼びます)。
配偶者Aの法定相続分は4分の3、C・Dの法定相続分は各8分の1ずつとなります。

子どもがいない夫婦の場合、生前に夫婦で築き上げた財産は、残された配偶者に残したいと考える方が多いのではないでしょうか。しかし、このケースで被相続人が遺言書を残していないと、C・Dも相続権を主張することができてしまいます。

なお、相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限保証される遺産取得分があります。たとえ、「相続人の1人に全ての財産を相続させる」内容の遺言を書いたとしても、遺留分を主張された場合には、これを拒むことはできません。しかし、兄弟姉妹の相続人に遺留分はないため、子どもがいない夫婦の場合には、遺言を書くことで、全ての財産を配偶者へ相続させることが可能になります。離婚歴のある方の場合は、遺留分を考慮したうえで遺言を作成する必要がありますが、離婚歴のある方と子どもがいない夫婦の場合、将来相続で揉めるリスクが高いため、遺言を作成することをオススメします。

まとめ

今回の記事のポイントは、下記の3つです。

  • 養子縁組や認知など戸籍を確認しなければ分からないこともあるので、法定相続人が誰になるのかという確認作業は、必ず戸籍を取得して行う。
  • 子どもがいる場合、どこまでの範囲の子に相続権があるかは、戸籍でしか把握することができないので、思い込みで判断せず専門家に確認することが重要。
  • 離婚歴のある方と子どもがいない夫婦は、将来相続で揉めるリスクが高いため、遺言を作成する。

今回の記事では、法定相続人について説明していきました。
日本では、相続について勉強をする機会が少ないため、思い込みで判断し、何も対策をとらない方が多くいます。また、日本人の多くが遺言を書かない理由として「家族の仲が良いから」というものがあります。しかし、家族の間で相続の話をしている方がどれくらいいるでしょうか。相続の話し合いをしていないのに、なぜうちの家族は揉めないと分かるのでしょうか。それもまた思い込みである可能性もあります。

相続の対策は、亡くなってからはもちろん認知症になってからもできません。年を重ねるほど法律の難しい言葉を聞いただけで考える気力さえなくなってしまうかもしれません。元気なうちしかできないからこそ、正しい知識をもって、相続について考える時間を作ることが大切です。

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